いつのまにかオケ・アンの楽譜係に定着してしまい、
街のコピー屋さんに足しげくおもむく。
当然、領収書を要求する。
「あてさきは?」
「オーケストラ・アンサンブル京都で」
最初は、オケ名を知ってもらおう、憶えてもらおう、
色気タップリなので。
僅かな額の領収書にあて先を書いてもらう時間をじっと待った。
待っている間。
「オーケストラ・アンサンブル金沢」が頭をよぎる。
こっ恥ずかしくなる。
いつしか「オケ・アン京都でお願いします」になってしまった。
楽器を持ったまま、通りがかりのショ−ウインドウ。
試着してみるか?
「お荷物お預かりします。あら、これは何ですか?」
「ビオラです。すいません、大きくて」
「小さくケースにはいるんですね!もっと大きいものかと思っていました」
「?」
「床につきさして弾く、あれでしょう?」― 疑念のない笑顔 ―
あいまいにうなずくしかない。
時々、自ら選択した楽器のことを思う。
華麗なVnと豊かで荘重なVcの間で、なんともこころもとなく存在感のない立場のVa。
あってもなくってもどうにもなりそうな宙ぶらりん。
そういえば、子供の頃からぐずぐずしていた。
ぐずぐずしながら、多数決主義が横行していた時代を過ごしてきた。
あたりがすごい勢いでそれぞれの色で埋まって行く中、
こぼれ落ちたような透明な場所にかくれて、
よるべなく境目のない微妙なニュアンスをもつものを見つけることが好きだった。
憧れていた。
ビオラ、もっと大切にしなくっちゃ!
【 Va ・ Igui 】
あ! オケ・アンのびよりすとは、目下僅か3人半(Vcとカケモチ)。
是非、ご入団ください!